HOME | TOP | 目次 | BACK | NEXT

----

序 文

----

 私たちは、昨年一年間を通じて自分たちに与えられた、あふれるばかりのいつくしみについて、《慈愛の父》[IIコリ1:3]に心底からの感謝をささげるものである。昨年は、特に著しく格別な祝福の時期であった。それに先立つ時には、ほとんど私たちを圧倒せんばかりの困難の嵐が吹き荒れたが、「ほら、冬は過ぎ去り、大雨も通り過ぎて行った。地には花が咲き乱れ、歌の季節がやって来た。山鳩の声が、私たちの国に聞こえる」[雅2:11-12]。「主は私たちのために大いなることをなされ、私たちは喜んだ」[詩126:3]。

 この一年、膨大な数の会衆が熱心に集まって来た。その多くは、疑いもなく、あの恐ろしい災厄によってかき立てられた好奇心によって引き寄せられたに違いない。だが、聖霊なる主は、ご自分のことばを多くの人々の心に力強く適用してくださり、今や彼らは救いに至らせる《福音》の力の生き証人となっている。私たちの《教会集会》は幾度となく喜ばしい機会となってきた。そこにおいて私たちは、驚異に満ちた数々の物語を聞いたからである。放蕩者が矯正され、酔いどれが回心し、意気阻喪していた魂が解放されたのである。

 これらの説教に含まれている教理は、前二巻のそれと寸分違わないものではあるが、その主題の種別は異なるものとなっている。説教者は、神の深み[Iコリ2:10]に達することを、ごくまれにしか行なえなかった。魂が救われることを切望する彼は、魂を教化するよりは、覚醒させるような主題、それゆえ、キリスト・イエスにある強い人よりは、恵みにある幼子向けの主題を選びがちだったのである。《音楽堂》でなされた説教は、無頓着な人々の注意をとらえ、かたくなな良心を恐怖させることを目指すものであった。それゆえ読者の方々は、自分が願うほどには、重厚で、深みのある教理をそれらのうちには見いださないであろう。

 昨年の間、これらの説教の販売は二倍以上になり、それらが用いられたしかたについては、世界中の至る所から、この上もなく満足させられる証言が寄せられている。すべての賛美が主にのみささげられんことを。

 じきに私は、自分の初期の説教集――ウォータービーチで牧師をしていた頃の説教集(アラバスター&パスモア社刊)――を一巻発行することになっており、それも暖かく受け入れられるように、ここで前もって語っておきたいと思う。

 しかし、こうした個人的な事がらから離れて、《著者》は、あらゆる場所にいる主の聖徒たちに対して一言云いたい。

 兄弟たち。――ようこそ! イスラエルの《三一のエホバ》の恵みがあなたがたとともにあり、契約のあらゆる祝福が豊かにあなたがたのものとなるように。

 私たちにはこの時期、私たちの真中でなされている進展の明らかなしるしについて非常に感謝すべき理由がある。ことによると、使徒たちの時代からこのかた、いかなる年もこれほど福音説教における多大な努力を見たことはなかったかもしれない。天来のパン種は、次第次第に粉のかたまり全体をふくらませつつある。だれよりも鈍重な人々である何人かが活発にさせられつつあり、だれよりも活動的な人々でさえ、その勤勉さを増し加えられつつある。これまでの所、私たちは勇気を奮い起こして、私たちのエベン・エゼルを掲げている。

 しかし、兄弟たち。勧告の言葉を一言云わせてほしい。私たちには、より純粋な教理が必要である。多くの講壇において、神の深みは暗闇の中に押し込められている。人を差別する全能かつ無代価の恵みはいまだ異議を唱えられており、神の選びの愛はあざけられている。このことについて、嘆息し、泣こうではないか。

 さらに、いかに多くの熱心な祈りがなおも必要とされていることか。あなたがたの祈祷会は、本来あるべき状態にはなく、密室の祈りはあまりにもしばしばないがしろにされている。わが国の何百もの諸教会は、その集会所を取り囲む墓場も同然に熟睡しており、そのいくつかは、その墓の中にある屍とほぼ同じくらい腐り果てている。《型にはまった教役者たち》、《横暴な執事たち》、《偽善的な信仰告白者たち》、《つむじ曲がりの批判家たち》、《貪欲な教会員たち》はみな、まだ死んではいない。願わくは天来のあわれみがすぐに、こうした者が絶滅するところを見る恵みを私たちに与えてくださるように。

 何にもまして、私たちの主イエス・キリストの《来臨》を、喜びと忍耐をもって待望しようではないか。いかなる患難の中にあっても、このほむべき望みをもって慰め合い、私たちのすべての労苦において、主の再臨というほむべき確信から勇気を奮い立たされようではないか。

聖霊が豊かにあなたがたに授けられることを熱心に祈る、
キリストおよび教会のしもべ、

  C・H・スポルジョン
  ロンドン、1858年1月



HOME | TOP | 目次 | BACK | NEXT