Christ and His Table Companions

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キリストとその会食者たち

NO. 3107

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1908年8月27日、木曜日発行の説教

説教者：C・H・スポルジョン
於ニューイントン、メトロポリタン・タバナクル

「さて時間になって、イエスは食卓に着かれ、使徒たちもイエスといっしょに席に着いた」。――ルカ22:14

　キリスト教信仰の外的な儀式は2つしかなく、その2つはこの上もなく簡素なものである。だが、どちらとも人間による改変を免れなかった。そして、悲しいかな！　多くの害悪が作り出され、尊い教えの大きな部分が、こうしたみじめな歪曲によって犠牲にされてきた。例えば、バプテスマという儀式は、使徒たちによって執行された通りに、信仰者がキリストとともに葬られたこと、また、自分の主とともによみがえり、いのちにあって新しい歩みをするようになったこと［ロマ6:4］を示すものだった。だが人は浸礼を滴礼と取り替えなくてはならない。また、事をわきまえた信仰者を自意識のない子どもと取り替えなくてはならない。そして、そのようにしてこの儀式は押し殺されてしまう。もう一方の聖なる制度、主の晩餐も、信仰者のバプテスマのように、簡素さそのものである。それは、裂かれたパンと注ぎ出された葡萄酒からなっており、この糧が祝祭において食され、飲まれる。――私たちのためのキリストの苦しみを、また、聖徒たちが互いに、また、主との間で有する交わりを、喜ばしいしかたで象徴するものである。しかし、この儀式もまた、人によって手を加えられてしまった。ある者らによって、その葡萄酒は全く取り去られるか、ただ司祭階級だけのためのものとされた。また、その簡素なパンは聖別された聖体に変えられてしまった。その食卓について云うと、あらゆる国々の民における交わりの表象そのものであったが――というのも、交わりを表現するものとして、1つの食卓を囲んでともに飲み食いすることにまさるものがあるだろうか？――、もちろんこれも片づけられなくてはならず、「祭壇」が建てられなくてはならない。そして、主イエス・キリストを私たちが覚える助けとすべきであったパンと葡萄酒は、「血に染まっていない犠牲」へと変えられる。こうして、すべては、交わりのための聖なる制度であるかわりに、非聖書的な儀式となってしまう。

　私たちは、他の人々のこうした誤りを戒めとして、決して一字一句さえも神のことばにつけ足したり、差し引いたりしないようにしよう。聖書の土台の上にとどまり続けるがいい。そうすれば、あなたは安全に立っていて、あなたに質問する人々への答えを持っていられるであろう。しかり。それは、神の法廷においても提出できる答えである。だが、いったんあなたの気まぐれや、空想、好み、あるいは、何がしかるべき正しいことであるというあなたの観念が――神のことばの代わりに――あなたを支配するようになると、あなたは危険な進路に入り込んでしまったのである。そして、神の恵みが妨げない限り、数限りない害悪が結果として生じかねない。聖書が私たちの公認の権威であって、何者もそれを捨ててはならない。伝道の書で賢人は云う。「私は言う。王の命令を守れ」［伝8:2］。私たちは彼の忠告を繰り返し、それに私たちの主の母の賢明な戒めをつけ加えたいと思う。彼女はカナでこう云った。「あの方が言われることを、何でもしてあげてください」［ヨハ2:5］。

　私たちがいま黙想の中であなたに求めたいのは、この、最初に祝われた主の晩餐をじっと見つめることである。たちまち分かるように、その二階の大広間［ルカ22:12］には何の「祭壇」もなかった。食卓はあった。パンと葡萄酒が載った食卓はあったが、何の祭壇もなかった。また、イエスは膝まずかなった。――そのようなそぶりは何も記されていない。――むしろ、腰を下ろされた。疑いもなく、東方様式の座り方、すなわち、なかば身を横たえるようにして、主はご自分の使徒たちとともに腰を下ろされたに違いない。さて、この晩餐を制定したお方は、これがいかにして執り行なわれるべきかご存知であったし、その最初の執行が他のすべての模範となるべきであった以上、私たちはこう確信して良いであろう。この聖餐式のもとにやって来る正しいしかたは、食卓を囲み、腰を下ろすか身を横たえた上で、ともにパンと葡萄酒を食べ、かつ飲んでは、私たちの主を覚えることである、と。

　《救い主》がご自分の十二人の使徒たちとともに腰を下ろしておられるのを見てとるとき、私たちはこう問おうではないか。第一に、このことは、彼らをどう変えたか？　それから第二に、このことは何を暗示していたか？　そして第三に、私たちは、さらにこのことから何を正当に推論できるか？

　I.　まず第一に私たちは、《大いなる主人》、シオンの主なる《王》が食卓に着き、ご自分の十二使徒ともに食べ、かつ飲んでいる姿を見てとる。――《このことは、彼らをどう変えただろうか？》

　もともと彼らがいかなる者であったかに注意してみるがいい。主が最初に彼らを召されたことによって、彼らは主に従う者となった。というのも、主は彼らに、「わたしについて来なさい」［マタ4:19; 9:9］、と仰せになったからである。これはすなわち、彼らは幾多の証拠やしるしによって、主がメシヤであると確信し、それゆえに、主に従う者たちとなったということである。従う者たちは、自分たちの指導者との間に大きな隔てがあり、彼とほとんど、あるいは、全くの没交渉であることがありえる。というのも、その指導者は、彼の群れの一般成員が近づくにはあまりにも偉大な者でありえるからである。この弟子たちの場合、彼らの従い方は、非常に親密なものであった。というのも、彼らの《主人》は非常に身をへりくだらせてくださるお方だったからである。だが、それでも、彼らの交流は最初は必ずしも常にきわめて親密なものではなかった。それゆえ、初めから彼らをこの晩餐のような祝祭にはお召しにならなかった。彼らは従うことから始めた。そして、これこそ私たちが始めなくてはならない所である。たとい私たちがまだ私たちの主と親しく結び合わされることができないとしても、少なくとも、主の御霊によって主の御声を知ること、そして、羊が羊飼いについて行くように主について行くことはできるであろう。主について行く最も重要な道は、主に信頼すること、それから、主の模範を勤勉に模倣することである。これは、良い始めであり、終わりも良いものとなるであろう。というのも、きょう主とともに歩む者たちは、来世で主とともに休むことになり、主の足跡を踏んで行く者たちは、主とともにその御座に着くからである。

　主に従う者となった彼らは、次に、主の弟子となった。人は、しばらくの間、従っていても、まだ弟子になっていないことがありえる。従う者は盲目的について行き、いかに多くのことを聞いても、それを理解できないでいることがありえる。だが、その人が弟子になると、彼の《主人》は彼を教えて、真理へと導き入れてくださる。説明し、解き明かし、種々の困難を解決し、疑いを晴らし、真理を分かりやすくすることは、自分の弟子たちの間にいる教師の務めである。さて、従う者が弟子となることは、非常にほむべきことであったが、それでも弟子たちは、自分の《主人》とともに座って食事をともにするほど親密であるとは限らない。ソクラテスやプラトンは、アカデメイアの多くの人々を知っていたが、彼らを自宅に招くことはしなかった。私の兄弟たち。たといイエスが私たちを召してご自分の弟子としてくださるだけだったとしても、私たちは非常に感謝してしかるべきであったろう。もし私たちが主の足元に座ることを許されるだけで、いま前にしているような歓待に決してあずからなかったとしても、私たちは途方もない恩義を感じて当然であったろう。だが今や、主が私たちに、さらに高い地位を恵んでくださっている以上、決して弟子として不誠実な者にならないようにしよう。日ごとにイエスから学び、聖書を調べ、主が私たちに何を教えておられるかを見てとろう。そして、それから、主の聖霊の助けによって、細心の注意を払って従おう。それでも、それを越えたものがあるのである。

　主の弟子となったこの選びの者たちは、次に、主のしもべへと引き上げられた。それは一段と高い進展である。弟子はほんの子どもであることもあるが、しもべにはそれなりの力があり、ある程度までの訓練を受けていて、そのお返しに何がしかのものをささげるからである。彼らの《主人》は彼らに福音を宣べ伝え、恵みの使命を果たす力を与えてくださった。そして、幸いなことよ、このような《主人》に仕え、その御国を設立する助けを行なうように召された者たちは。私の愛する兄弟姉妹。あなたがたはみな、キリストのしもべであると自覚しているだろうか？　もしそうだとしたら、あなたの信仰の弱さゆえに、時としてその奉仕が重く思われても、あなたがそもそもしもべとなっていることを非常に感謝するがいい。というのも、神に仕える方が、この世のすべての王国を治めるよりもすぐれているからである。キリストの最も卑しいしもべとなる方が、人々の間で最大の者となりながら、自分自身の情欲の奴隷であり続けたり、単に人を喜ばせようとする者であるよりもましである。主のくびきは負いやすく、主の荷は軽い［マタ11:30］。このような《主人》のしもべは、主の召しを喜ぶべきである。だが、それをも越えたものがあるのである。

　その生涯の終わり近くになる頃、私たちの《主人》はご自分の弟子たちとの関係が、さらに身近なものであることを明らかに示して、このような言葉を仰せになった。「わたしはもはや、あなたがたをしもべとは呼びません。しもべは主人のすることを知らないからです。わたしはあなたがたを友と呼びました。なぜなら父から聞いたことをみな、あなたがたに知らせたからです」［ヨハ15:15］。これは、大きく一歩前に進むことである。友は、いかに卑しくとも、自分の友と大きな心やすさを楽しむ。友には、しもべが知る必要のないことまで告げられる。友が享受する交わりには、ただのしもべや、弟子や、従う者は到達できない。願わくは私たちが、このいや高い結びつき、このより愛しい絆を知ることができるように！　願わくは私たちが私たちの《主人》の友情を享受することなしに満足してしまわないように！　「友を得る者は、友らしい振る舞いをしなくてはならない」［箴18:24 <英欽定訳>］。そして私たちは、もしキリストの友情を得たければ、主の御国の進展と、主の真理と、主の民との味方にならなくてはならない。主は、どんなときにも愛する《友》［箴17:17］であられる。もしあなたが主の友情を享受したければ、主のうちにとどまるよう心がけるがいい。

　さて注意するがいい。その《受難》の前夜、私たちの主は、ご自分の友たちを、通常の友情をさらに一歩越えた所へ至らせてくださった。ただの従う者は自分の指導者と同じ食卓には着かない。弟子は、自分の師と同輩だなどと主張しはしない。しもべが自分の主人と同じ食卓で歓待されることなどめったにない。友とされた者も常に招待されて客となるわけではない。だが、ここで主イエスはご自分の選んだ者たちを、ご自分の会食者とされた。彼らをご自分と同じ食卓に着き、同じパンを食べ、同じ杯から飲む者へと引き上げられた。その立場から、主は決して彼らを引き下ろすことがなかった。彼らは代表者たちであり、主が彼らを置かれた所に、主はご自分の聖徒たち全員を永久に置いてくださる。主の、信仰を有する民はみな、神聖な特権と召しによって、イエスと同じ食卓に着いているのである。というのも、「私たちの交わりとは、御父および御子イエス・キリストとの交わり」［Ｉヨハ1:3］だからである。主は私たちの心の中に入って、私たちとともに食事をし、私たちも主とともに食事をするのである［黙3:21］。私たちは主の会食者であり、神の国で主とともにパンを食べることになるのである。

　II.　それで今、次のことに移って、第二にこう問いたい。《このように会食者とされたことは、何を暗示していただろうか？》

　まず最初に、このことが暗示していたのは、相互への信義である。このようにともに厳粛に飲み食いすることは、互いに忠実であろうと誓い合うことであった。このことは、そのように理解されたに違いない。さもなければ、次の文句には何の力もなかったことであろう。「わたしのパンを食べている者が、わたしに向かってかかとを上げた」［ヨハ13:18］。これは、こういう意味ではないだろうか？　ユダは、自分の主のパンを食べたがゆえに、主を裏切ったり、主に向かって自分のかかとを上げたりすべきではなかったのである。これは、暗示された契約のしるしであった。ともに食した彼らは、互いに忠実であるべき盟約の下にあった。さて、キリストの真のしもべであり友である、あなたがたの中の多くの人々が知っているであろうように、主イエスは、ご自分の食卓であなたとともに食べることにおいて、あなたに対して忠実であることを誓約しておられる。この《主人》は、決してユダのような真似をなさらない。――ユダとなる者は弟子たちの中にいる。主の内側には裏切り的なものが何もない。主は、私たちのお任せしたものを守ることができる［IIテモ1:12］だけでなく、忠実な方であり、そのように守ってくださる。主は、単に大きく主要な問題についてばかりでなく、ご自分の約束したすべてのことについて忠実であられる。ならば、確実にこう知るがいい。あなたの《主人》があなたに向かって、ご自分の食卓に着き、ご自分とともにパンを食べるように求めてくださった以上、後にあなたを見捨てるおつもりなどなかったのだ、と。主はあなたを、ご自分の賓客として受け入れておられる。ご自分の極上の食物であなたを養っておられる。そして、それによって、こう云っておられるも同然なのである。「わたしは、何があろうと、あなたを決して捨てないであろう。そして、あらゆる試練と、抑鬱と、誘惑の時に、あなたの右にいて、あなたが動かされないようにし、最後まで、あなたが私の忠実さと真実さの証しとなるようにする」、と。

　しかし、愛する方々。あなたがこの晩餐を真に理解したければ、あなたからあなたの主に示されてしかるべき忠実さのことも思い起こさなくてはならない。というのも、祝宴は共有されるものであり、誓約は相互のものだからである。主とともに食べることにおいて、あなたは《十字架につけられた方》に誓約するのである。愛する方々。これまでの間、あなたは自分の誓約をどれだけ守ってきただろうか？　あなたは主とともにパンを食べてきた。また、あなたは決して、心の中で主にかかとを上げるほど、はなはだしく道を外れたことはないと思う。だが、あなたは常にしかるべきほどに主に栄誉を与えてきただろうか？　招待客がするように振る舞ってきただろうか？　あなたは、自分に対する主の愛を思い出し、主に対するあなたの愛をその隣に置けるだろうか？――隣り合わせて、恥ずかしく思わずにいられるだろうか？　願わくは、この時以後、聖霊が私たちの魂の中に、この《愛する方》に対する執拗な信義を作り出してくださるように。私たちの心がこの方からさまよい出したり、この方の栄光への私たちの熱心が衰えたりすることを許さないような信義を！

　さらに、覚えておくがいい。このようにともに厳粛に飲み食いすることには、弟子たちと彼らの主の間における信義のみならず、弟子たち自身の間における信義の誓約があることを。ユダは、ペテロか、ヨハネか、ヤコブを裏切っていたとしても、裏切り者となったであろう。そのように、私の兄弟たち。あなたがたが1つの食卓に集うとき、あなたがたはこれ以後、互いに対して真実でなくてはならない。いかなる口論やねたみもやまなくてはならない。また、寛大で、情愛深い霊があらゆる胸を支配していなくてはならない。もしも、あなたとともに聖餐にあずかった人々の悪口が云われているのが聞こえたとしたら、こう考えるがいい。自分が彼らとともにパンを食べてきた者である以上、自分は彼らの名声を守るべきである、と。もし何か毒づくような非難がキリストにある兄弟に対して浴びせられるとしたら、こう考えるがいい。その兄弟の評判は、自分の評判と同じくらい自分にとって愛しいものなのだ、と。もしも私が一般生活に属する何かに、それよりもはるかに高く、ずっと霊的な結合をなぞらえて良ければ、私たちの間では、1つの神聖なフリーメーソン主義を保とうではないか。あなたがたは、からだの一部分として互いにそれぞれのもの［ロマ12:5; エペ4:25］なのである。互いに心から熱く愛し合うがいい［Ｉペテ1:22］。同じ杯から飲み、同じパンから食すことで、あなたは、偽りではないはずのしるしを世の前にはっきり示すのである。それが、あなたに対するキリストの忠実さを真実に示しているように、キリストに対する、そして、互いに対するあなたの忠実さを同じくらい現実に象徴する者とするがいい。

　次のこととして、ともに飲み食いすることは、相互の信頼のしるしである。彼らは、そこにともに座り、自ら進んで互いに信頼し合おうと明言した。この弟子たちは自分の《主人》を信頼した。主が自分たちを誤り導くことも、欺くこともないと知っていた。彼らはまた互いに信頼し合っていた。というのも、彼らのひとりが自分の主を裏切るだろうと告げられたとき、彼らは互いに疑り合うことをせず、「主よ。まさか私のことではないでしょう」［マタ26:22］、と口々に云ったからである。彼らは互いを大いに信頼していたし、主イエスは、私たちが見てきたように、彼らに大きな信頼を置いて、彼らを友と扱われた。主は、来たるべきご自分の苦しみと死という大きな秘密さえ彼らに打ち明けてくださった。その晩餐の食卓に着いたのは、信じて疑わない者たちであった。さて、愛する方々。あなたがこの食卓の回りに集まるときには、主イエスを信じきって疑わないという正しい霊でやって来るがいい。たといあなたが苦しんでいようと、主の愛を疑ってはならない。むしろ、主がすべてのことを働かせてあなたの益としてくださる［ロマ8:28］ことを信じるがいい。たとい種々の心配事で悩んでいるとしても、それらを全くあなたの《贖い主》の御手にゆだねることによって、あなたの信頼を証しするがいい。これをあなたにとって、聖餐の祝祭としたければ、あなたの《主人》に対する疑惑を胸にしながらやって来てはならない。しかり。主とともにパンを食するときには、あなたの信頼を表わすがいい。また、そこには兄弟同士の信頼もあるようにするがいい。猜疑心や不信感があなたがたの間にあるのを見るのは、嘆かわしいことであろう。猜疑は交わりの死である。あるキリスト者が、別のキリスト者から悪く思われていると想像した瞬間に、たといそうした思念にこれっぽっちも真実がないとしても、たちまち苦い根が植えつけられてしまう。私たちは互いの真摯さを信じようではないか。というのも、私たちはこう確信してかまわないからである。私たちの兄弟たちひとりひとりは、私たちが今している以上に信頼される権利がある、と。どうしても疑わなくてはならないとしたら、あなたの疑惑を内側に向けて、あなた自身の心を疑うがいい。だが、この食卓であなたとともに聖餐にあずかる人々と出会うときには、自分の内側でこう云うがいい。「もしこのような人が私を欺くとしたら、そして、悲しいかな！　そうしたこともありえるが、ならば、私はつけこまれるままでいよう。私のキリスト者仲間に対して不断に不信の念をいだいているくらいなら、そうしよう」、と。

　この食卓の回りに集まる第三の意味は、心からの兄弟の情である。私たちの主は、ご自分の弟子たちと食卓に着くことにおいて、ご自分が彼らのひとりであること、まことに《兄弟》であることをお示しになった。その場の彼らの席次に何か上下があったとは、一言も書かれていない。もちろん、ローマの《侍従長》がその食卓を整えたとしたら、彼はペテロをキリストの右の座につけ、他の使徒たちは、その将来の司教職の格付けに従って席次を決めたことであろう。だが、私たちが彼らの席順について知っているのは、せいぜいヨハネが《救い主》の隣に座っており、主の御胸にもたれかかっていたこと、また、ペテロがかなり遠くに離れていたということ程度である。――そのことは確かである。というのも、彼はヨハネに「合図をした」*［ヨハ13:24］と云われているからである。もし彼がヨハネの隣に座っていたとしたら、ヨハネに囁いていただろうが、彼はヨハネに合図をした。それで、彼は食卓のかなり下座にいたのであろう。実際、もしもこの客たちの順番に何か「下座」だの「上座」だのがあったとしたらだが。私たちの信ずるところ、事実、彼らはそこに神聖な同等さによって座っていた。彼らの間には、《長兄》なる主イエスがおり、その他の全員はこのことばに従って並んでいた。「あなたがたの教師はただひとり、キリストしかなく、あなたがたはみな兄弟です」［マタ23:8 <英欽定訳>］。ならば、今回この食卓に再びやって来る際には、こう感じようではないか。私たちは神聖な関係の絆によってイエス・キリストに結びつけられており、このキリストは天に高く上げられていて、このお方を通して、私たちの同輩キリスト者たちとの関係は非常に近しく、親密なものとなっているのだ、と。

　おゝ、キリスト者の兄弟関係がもっと現実のものであればどんなに良いことか！　「兄弟」という言葉そのものが、偽善の一片としてあざけられるようになっている。それも当然である。というのも、ほとんどの場合、それは勿体ぶった決まり文句として使われており、多くの場合、ほとんど何も意味していないからである。しかし、それは何かを意味すべきである。あなたがこの食卓にやって来る権利を少しでも有しているとしたら、あなたは、イエスの血によって洗われている者たちが、あなたの心の愛と、あなたの慈悲深い行動とを求めてしかるべきであると本当に感じていなくてはならない。何と！　あなたがたは天国で永遠にともに暮らすことになっているのに、この下界では互いに何の愛情も示し合おうとしないのだろうか？　あなたの《主人》の新しい戒めは、あなたがたが互いに愛し合うことである［ヨハ13:34］。あなたがたは、それを無視しようというのだろうか？　主は、これをキリスト者の徽章としてお与えになった。もしもあなたがた黄金の十字架を身につけているなら、ではなく、むしろ、――「もしあなたがたの互いの間に愛があるなら、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての人が認めるのです」［ヨハ13:35］。それこそ、キリスト者が本当にイエス・キリストの弟子であることを示す徽章である。この場のこの食卓において、私たちは兄弟の情を見いだす。この神聖な晩餐を食す者は誰であれ、自分はキリストにある兄弟団のひとりであると宣言している。同じ御国の進展のために苦闘し、真摯な共感を有し、からだの一部分として互いにそれぞれのものであり、全員が、からだの中の器官だとしたら、神がこのことを今しも、キリスト教界のすべてにわたる事実としてくださるように。そのとき、いかにこの世は驚嘆して、こう叫ぶことであろう。「見よ。このキリスト者たちは何と互いに愛し合っていることか！」、と。

　しかし、この食卓の交わりは、さらにまだ意味することがある。それは共通の楽しみである。同じパンをイエスは食し、彼らは食す。同じ杯からイエスは飲み、彼らも飲む。こうした食品には何の区別もない。これは何を意味しているだろうか？　これは、私たちにこう云っているではないだろうか？　すなわち、キリストの喜びは、ご自分の民の喜びである、と。主はこう仰せにならなかっただろうか？　「わたしの喜びがあなたがたのうちにあり、あなたがたの喜びが満たされる」［ヨハ15:11］、と。まさにキリストを楽しませる喜びとは、主が御民のために用意なさるものなのである。あなたは、もし真の信仰者だとしたら、キリストの喜びに共感できるはずである。主の御国が来ること、主の真理が前進すること、罪人たちが救われること、恵みに栄光が帰され、聖潔が押し進められ、神が高く上げられることを見て楽しむはずである。これもまた、主の楽しみである。しかし、私の愛する兄弟たち、また、同じ信仰を告白する人たち。あなたは、自分のおもな喜びがキリストの喜びと同じであると確信しているだろうか？　あなたの人生の大檣支索は、主の食べ物、飲み物であったもの、すなわち、《天におられる御父》のみこころを行なうこと［ヨハ4:34］と確かに同じだろうか？　そうでないとしたら、残念ながら、あなたはこの食卓と何の関係もないのではないかと思う。だが、もしそうだとしたら、そして、あなたがこの食卓に来るとしたら、私はあなたがキリストの喜びをともにするよう祈るものである。願わくは、主があなたをお喜びになるように、主をあなたが喜び、あなたの交わりが甘やかなものとなるように！

　この点における最後のこととして、1つの食卓におけるこの祝宴が示唆していたのは親しげな情愛である。両親と一緒に食卓に着くのは、子どもの立場を占めることである。そこは情愛が支配する所だからである。食卓に着くのは、栄誉ある立場を占めることである。「マルタは給仕していた。ラザロは、イエスとともに食卓に着いている人々の中に混じっていた」［ヨハ12:2］。しかし、その栄誉は、恐れではなく愛が示唆するようなものである。食卓に着いている人々はしばしば、他のどこよりも自分たちの精神を全く露わにする。もしもある人を理解したければ、あなたは証券取引所にいるその人に会いに行ったり、その人を追って市場に行ったりしない。というのも、そこではその人は人と交わらないからである。むしろ、あなたはその人の食卓に行き、そこでその人は自分の胸襟を開く。さて、主イエス・キリストはご自分の弟子たちとともに食卓に着かれた。それは食事であった。家庭的な種類の食事であった。気の置けない交友がその場を支配していた。兄弟姉妹。残念ながら、私たちは時としてこの食卓に来ても、キリストと何の交流もなしに再び去って行くことがあったのではないかと思う。そして、そのとき、それは、空しい形式的行為であって、それ以上の何物でもなかった。神に感謝すべきことに、私たちの中のある者らがしているように、また、何年もの間そうしているように、安息日ごとにこの食卓のもとにやって来る際に、私たちはまだ大体の場合は、キリストとの、私たちが知る中でも最も近しい交わりをここで享受してきたし、一千もの折に、この儀式ゆえに主の御名をほめたたえてきた。

　それでも、単にパンを食べ葡萄酒を飲むだけで、そこにある一切の神聖な意味を失っていることもある。真剣に祈るがいい。主がご自分をあなたに明らかに示してくださるように。こう求めるがいい。それがあなたにとって死んだ形式にはならず、いま実際、あなたがキリストに自分の心をささげる一方で、主があなたにご自分の御手と御脇を示して、あなたにご自分の苦悶と死を知らせてくださるように、と。それによって主は、あなたを必ず来る御怒りから贖ってくださったのである。こうしたすべては、そして、それよりもはるかに多くのものは、イエスが十二弟子とともに着かれた食卓の教えである。私がしばしば不思議に思ってきたのは、なぜローマ教会は、その最も名高い画家たちのひとり、レオナルド・ダヴィンチによるあの絵画を買い占めないのかということである。そこでは、私たちの主がご自分の弟子たちとともに食卓の中央に描かれている。これは、この件に関する教皇制の教理に矛盾している。あの絵が壁の上にある限り、また、その複製画が至る所に広まっている限り、ローマ教会は初期の《教会》の教えに反しているとの罪を宣告されているのである。今のローマ教会は、1つの「祭壇」を打ち立てているが、以前は、それを犠牲の祭壇として考えるべきではないと告白していたからである。以前のローマは、それが交わりの食卓であると告白していた。そこで主は膝まずいていなかったし、犠牲をささげる祭司のように立ってもおらず、むしろ、ご自分もご自分の弟子たちも座っておられた。私たちは、少なくとも古人によって全く叱責される恐れはない。というのも、私たちは、初代の方法に従っており、従おうとしているからである。私たちの主は、私たちに、ご自分がおいでになるまでこのことを行なうようにとの戒めを与えておられる。――それを変えるようにという戒めではなく、ただご自分が再び戻って来るまで、同じようなしかたで、「これをせよ」と云うだけの、他の何物でもない戒めを。

　III.　しめくくりとして、私たちはこう問いたいと思う。《この、キリストがご自分の弟子たちと食卓に着かれたことから、さらに何を推論できるだろうか？》

　答えよう。最初に、ここから推論できるのは、あらゆる聖徒たちの平等性である。ここには、十二人の使徒たちがいた。しかしながら、彼らの使徒職はこの件に関わっていなかった。この使徒たち全員が天国に行ってしまった後で、主の晩餐が祝われたとき、使徒たちがいなくなったからといって何らかの改変が施されただろうか？　全くそのようなことはない。信仰者たちは、このことを、主を覚えて、主が来られるまで［Ｉコリ11:26］行なうべきである。最初の使徒たちがみな《教会》からいなくなったときに、それを変えるようにという命令は何もなかった。しかり。それはなおも同じであるべきであった。――パンと葡萄酒、そして食卓を取り囲むことを、主が来られるまで続けるのである。それゆえ、私はあらゆる聖徒の平等性を推断する。職務の違いはある。奇跡的な賜物には違いがあった。恵みにおける成長には大きな違いがある。だが、それでも、神の家族の中では、あらゆる聖徒たちが、使徒であれ、牧師であれ、教師であれ、執事であれ、長老であれ、平の会員であれ、みな同等の者として、1つの食卓で食するのである。ここには1つしかパンはなく、1つしか葡萄の果汁はない。

　神の《教会》の中においてのみ、かの、政治的には気違いじみた言葉、「《自由》、《平等》、《博愛》」は、ただの夢以上のものとなりえる。それらがありえる場所、それはイエスがおられる所である。共和国においてではなく、私たちの主なる《救い主》イエス・キリストの御国においてそうである。そこでは、あらゆる支配と統治が主に与えられており、私たちの中のすべての者が喜んで主を私たちの栄光に富む《かしら》として認め、私たちはみな兄弟なのである。決して、過去の信仰者たちが私たちによりも卓越した性質を持っているというような考えに陥ってはならない。聖パウロだの、聖マタイだの、聖マルコだのについて語りたければ、喜んで、そこに座っている聖ウィリアムや聖ジェーンについて語るのでなくてはならない。というのも、もし彼らがキリストのうちにいるとしたら、彼らは、あの最初の聖徒たちと同じくらい真実に聖徒だからである。そして、私が予期するところ、一部の人々は、伝統によって聖者の列に加えられた多くの人々よりも、ずっと高い聖徒の地位に達していると思う。聖徒であることの高い位置は、私たち全員に開かれている恵みによるものであり、主は私たちに上るよう招いておられる。主が初代の聖徒たちのうちに作り出されたものが、自分の中には作り出せないと考えてはならない。あなたは、そのような考え方をしているからこそ、それを求めて祈らないのである。また、それを求めて祈らないからこそ、そこに達さないのである。神の恵みは使徒たちを支えた。その恵みはきょうもその頃より少なくなってはいない。主の御腕が短いわけでも、主の力が制限されているわけでもない。もし私たちが信じられさえするなら、また、あの最初の聖徒たちのように熱心でありさえするなら、私たちはまだ諸王国を征服するであろうし、来たるべき日にはヒンドゥー教の神々も、マホメットの数ある欺瞞も、ローマの虚偽も、古代哲学の数々が、また、ギリシヤやローマの古典的な偶像礼拝が、最初にキリストに仕えた教役者たちの教えによって転覆されたのと同じように確実に転覆されるであろう。あなたのためには同じ食卓があり、表象において同じ食物があり、恵みはあなたをあの聖なる人々のようにすることができる。というのも、あなたは同じ血で買い取られており、同じ御霊によって生かされているからである。ただ信ずるがいい。というのも、「信じる者には、どんなことでもできる」［マコ9:23］からである。

　もう1つの推論は、軽く触れるだけにしておくが、こうである。あらゆる時代における教会の必要は同じであり、《教会》の必要に対する満たしは決して変わらないであろう。この食卓はなおもあるであろうし、同じ食品を載せた食卓があるであろう。――なおも食べるためのものとしてはパンがあり、パン以上のものは何もないであろう。なおも飲むためのものしては葡萄酒があり、葡萄酒以下のものは何もないであろう。《教会》は常に同じ食物、同じキリスト、同じ福音を必要とするであろう。裏切り者ども。外へ出て行くがいい。お前たちは私たちに、この啓蒙された十九世紀に似つかわしく私たちの福音を変えなくてはならないという！　偽りの心よ。外に出て行くがいい。お前たちは私たちに、太陽をも、月をも、星々をも越えて存続する永遠の真理の調子を引き下げて、お前の自慢する文化に似つかわしいものにしたがるが、そうした文化など、うわべを飾った無知にほかならない！　否。古に神の御前で要塞をも破るほどに力のあるものであった［IIコリ10:4］この真理は、今なお力があり、私たちは死ぬまでそれを支持するであろう。《教会》は、パウロが、あるいは、アウグスティヌスが、あるいは、カルヴァンが説教していた頃と同じくらい恵みの諸教理を必要としている。《教会》は、昔と変わらず、信仰のみによる義認、代償贖罪、新生、そして神の主権がその講壇から説教される必要がある。そして、神の恵みによって教会はそれをも持ち続けるであろう。

　最後に、キリストがご自分のすべての弟子たちを会食者の地位に至らせてくださったというこの真理の中には、それがご自分の民全員の永遠にわたって受けるべき分であるという予言がある。天国における特権が、地上における特権に劣るはずがない。天上の状態にある信仰者たちが、下界で有していた立場から引き下げられることなどあるはずがない。ならば、下界で彼らは何者だったろうか？　会食者たちである。天上で彼らはどうなるだろうか？　やはり会食者たちである。そして、神の国で食事する人は、何と幸いなことか［ルカ14:15］。「たくさんの人が東からも西からも、また南からも北からも来て、神の御国で、アブラハム、イサク、ヤコブといっしょに食卓に着きます」*［マタ8:11; ルカ13:29］。そして、主イエス・キリストはその食卓の上座にお着きになる。さて、この主の喜びの食卓はどのようなものとなるだろうか？　あなたの想像力を働かせ、主の受ける報いがことごとく御前にあり、主の勝利がことごとく成し遂げられたとき、主のこの魂の祝祭がどのようなものとなるか考えてみるがいい。それを想像したことがあるだろうか？　それを思い描けるだろうか？　それがいかなるものであるにせよ、あなたはそれにあずかることになる。もう一度云おう。それがいかなるものであるにせよ、あなたはそれにあずかることになる。あなたがた、貧しく働き詰めの婦人たち。おゝ、あなたにとって、それはいかなる変化であろう。キリストの栄光の宮廷の貴人たちの間に座り、あなたの主のそばにいて、あなたの一切の骨折り仕事は永遠に終わるのである！　また、あなたがた、悲しい苦しみの子どもたち。神の民の集いにほとんどやって来ることができず、ことによると、再びやつれ果てる寝床に戻って行くことになるかもしれない人たち。あなたはそこでは何の痛みもなく、永遠に主とともにいることになるであろう。あなたのものとなるこの喜びを期待して、あなたの現在の苦難を忘れるがいい。今の刻の種々の苦難に動かされてはならない。そして、たとい現在を喜べなくとも、未来を喜ぶがいい。それはじきにあなた自身のものとなるのである。

　しまいに、この深い悼みの言葉を述べる。――この場にいる多くの人々は、私たちがこれまで語ってきたことを理解できず、それと何の関係もないという悼みである。あなたがたの中のある人々は、この聖餐の食卓に来てはならない。キリストを愛していないからである。あなたは主を信頼していない。主と何の関係もない。一部の人々が「秘跡」と云うものには何の救いもない。嘘ではない。それらは、心からキリストのもとに来ない者たちにとっての迷妄にすぎない。あなたが外的なしるしのもとにやって来たければ、まず、象徴されているものを有していなくてはならない。ここに救いの道がある。「主イエス・キリストを信じなさい。そうすれば、あなたも……救われます」［使16:31 <英欽定訳>］。主を信じるとは、主を信頼することである。古い言葉を使えば、それは安臥である。主によりかかり、主に安らうことである。ここで、私はこの演壇の手すりによりかかる。私は自分の全体重を私の前にあるこの支えにかけている。霊的な意味で同じことをキリストに対して行なうがいい。主によりかかるがいい。あなたは罪の重荷を負っている。主によりかかるがいい。罪も何もかも負ったまま。あなたは全く価値なく、弱く、ことによると、みじめかもしれない。ならば、その弱さ、価値のなさ、みじめさ、すべてを投げかけるがいい。主をあなたにとって《すべてのすべて》とするがいい。そして、このように主に信頼したときに、あなたは主に従う者となるであろう。へりくだりによって、さらに進んで主の弟子となり、従順によって主のしもべとなり、愛によって主の友となり、交わりによって主の会食者となるがいい。

　願わくは聖霊がそのようにあなたを導き給わんことを。イエスのゆえに！　アーメン。

　

キリストとその会食者たち［了］

ｽ

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