HOME | TOP | 目次

赦されざる罪

 三位一体の教理は、教理体系という面から見ても、信仰という面から見ても、キリスト教の基盤である。私たちは、三位一体の神のそれぞれの位格と特別に深い関係にある。御父は律法の源泉であり、救いの御計画の創始者である。父なる神はご計画を立てて、救われる人々を選び、お召しになる。御子は贖いをされる。御霊は、御子が代価を払って手に入れた贖いを人に適用してくださる。私たちは御父に反逆する。御子を信じない。聖霊に抵抗し、悲しませ、冒涜する。しかし、御父に対する罪も、御子に対する罪も、すべて赦されるが、聖霊に対する罪だけは決して赦されることができない。

I. その一般的な特徴。 この問題に関しては、以下のことが云えるであろう。 1. この世には、赦されることのできない罪というものがある。 2. それは公然たる罪であって、単なる心の中で犯す罪ではない。これは冒涜の罪である。口に出され、行動に移されたものでなければならない。 3. これは特に、聖霊に対して犯される罪である。聖霊に対して向けられた罪である。この罪は、聖霊を冒涜し、あるいは侮辱するものである。

II. その具体的な特徴。 この罪の具体的なあらわれには以下のようなものがある。 1. 聖霊を邪悪なものであるとみなし、そのように公言すること。聖霊がなされるみわざをサタンのものである、あるいは邪悪な霊によるものであると云うこと。 2. また、聖霊の証しを偽りのものであるとして、はねつけること。聖霊は、イエスが神の御子であると証しされる。この罪を犯す者は、イエスはただの人間でしかないと明言する。聖霊は、イエスが聖なる方であると証しされる。この罪を犯す者は、イエスは悪人だと明言する。聖霊は、イエスの血がすべての罪から清めると証しされる。この者は、イエスの血を汚れたものであると断じ、足で踏みにじる。

 3. またこの罪には、聖霊に対して意識的に、また故意に抵抗すること、よくよく考えぬいた上で聖霊と聖霊の証しする福音にさからい、そのどちらも忌まわしいものだと憎悪して離れ去っていくことがふくまれる。

 この罪を犯すには、以下のことが前提である。 1. 福音の知識。 2. 福音が真理であるという確信。 3. 福音の力を体験していること。 これは、聖霊の証しをことごとく否定し、聖霊をも、その働きをも、悪意をもって公然と拒否することなのである。

 この赦されることのできない罪について正しい考え方を持つためには、マタイ12:31 と、その並行箇所であるマルコとルカの章節[マコ3:28,29; ルカ12:10]を、ヘブル6:6-10および10:26-29と比較しなくてはならない。

III. この罪の結果は、神の永遠のさばき、また魂が神に見捨てられることである。 これは、その人の何も感じないような無関心さ、神にも神の宣告にも全く関心を示さない無感動な態度のうちにはっきり示される。あるいは、それはぞっとするような心の恐怖、蠍の針のように心を刺す良心の呵責、永遠の審きに対する恐怖などのうちにはっきり示される。地獄に落ちた魂が経験するものならみな、この罪を犯す者が味わっておかしくない。しかし、神の民が経験するようなこと、御霊がまだ戦い取ろうと働きかけておられる人々が経験するようなことを、このように神から捨てられた人々は決して体験することができない。

IV. この問題について明確に認識しておくことは非常に重要である。

 1. それは、以下のような誤った考えが世に満ちているからである。 a. 使徒は、ことさらに罪を犯し続けるならば、罪のためのいけにえは残されていない、と云っているから、故意に犯した罪はすべて赦されない。 b. 特別に重大な罪を犯す者は、決して赦されない。たとえば教会から離れることはキリストを否定することであって決して赦されない。 c. バプテスマを受けたあとで犯した罪はすべて赦されない。
 2. また、良心の敏感な人々は、この罪を犯してしまったのではないかという恐怖で、しばしばいたずらに自分を苦しめるからである。一般にこうした人々は病的な状態にあるので、彼らを説得するのはやさしいことではない。
 3. この赦されないという罪は確かに存在している。だからこの罪を犯すようにしむけることは何であれ、怖じけをふるって避けるべき理由がある。信仰を軽んずるような行ない、真理に反抗するような言動、御霊の働きにさからうような態度はすべて避けなくてはならない。私たち自身の魂に対する御霊の働きであれ、他の人々の魂に対する御霊の働きであれ、聖霊に反抗するようなことはすべて避けなくてはならない。
 4. また私たちの霊的いのちは聖霊によって支えられているのであるから、私たちは聖霊を特別に尊重すべき理由があるのである。


赦されざる罪[了]

HOME | TOP | 目次